コラム
新リース会計基準はいつから? ~ 対象企業や変更点・実務への影響を解説 ~

目次
新リース会計基準への対応について、いつから適用されるのか、自社は何を準備すべきかと悩んでいる経理や財務の担当者の方は多いのではないでしょうか。この記事では、新リース会計基準の適用時期や対象となる企業の条件に加えて、これまでの基準との違いを詳しく解説します。読み終わると、新基準が実務にどのような影響を与えるのかを理解し、適用に向けて具体的な準備の手順を踏めるようになります。
新リース会計基準の適用時期はいつから?
新リース会計基準は、企業会計基準委員会(ASBJ)が2024年9月13日に公表した企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」に基づいています。ここでは、企業の対応方針に合わせて設定された2つの適用スケジュールを表で整理して解説します。
| 適用方式 | 適用開始時期の条件 | 3月決算企業の場合の適用年度 |
|---|---|---|
| 強制適用 | 2027年4月1日以後に開始する連結会計年度および事業年度の期首から | 2028年3月期から |
| 早期適用 | 2025年4月1日以後に開始する連結会計年度および事業年度の期首から | 2026年3月期から |
参考:企業会計基準委員会(ASBJ)「企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」等の公表」
2027年4月から強制適用
新リース会計基準の原則的な強制適用は、2027年4月1日以後に開始する連結会計年度および事業年度から始まります。日本の企業で最も多い3月決算の企業を例に挙げると、2027年4月1日から始まる2028年3月期の決算から、新しい基準に従った会計処理が本格的に求められます。
この時期から逆算すると、実務上の準備期間はそれほど長く残されていないことがわかります。リース契約の件数が多い企業や、全国の拠点にリース資産が点在している企業では、適用開始の直前になってから情報の収集やシステム改修の準備を始めると間に合わなくなる危険性があります。
つまり、強制適用の時期が2027年であることを念頭に置き、今のうちから計画的にプロジェクトを進めることが重要です。まずは自社の決算期と照らし合わせ、具体的にどの年度から強制適用されるのかを社内で明確に確認してみてください。
2025年4月から早期適用可能
企業の準備状況や経営戦略によっては、強制適用の時期を待たずに早期適用を選択することも可能です。具体的には、2025年4月1日以後に開始する事業年度の期首から、新リース会計基準を前倒しで適用できます。
早期適用を選択するメリットとしては、海外の子会社や関連会社がすでに国際財務報告基準(IFRS)を採用している場合に、グループ全体で会計基準を統一しやすくなることが挙げられます。投資家や金融機関に対して、財務情報の透明性をいち早くアピールできるという側面もあります。
しかし、早期適用を行うためには、システム改修や社内の業務フロー構築をそれだけ早く完了させる必要があります。この例から言えるのは、早期適用は経営上のメリットがある一方で、実務担当者の負担が前倒しになるということです。自社のリソースを見極めて、早期適用を見送るかどうかの判断を下すことが求められます。
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新リース会計基準の対象となる企業

新リース会計基準はすべての企業に一律で適用されるわけではなく、企業の規模や形態によって対象が変わります。どのような企業が対象になるのかを、以下の表で整理します。
| 企業区分 | 適用要否 | 該当する主な企業の特徴 |
|---|---|---|
| 上場企業・大会社 | 強制適用 | 上場企業、資本金5億円以上または負債200億円以上の会社 |
| 会計監査人設置会社 | 強制適用 | 会計監査人を設置している会社、および対象企業の子会社 |
| 中小企業 | 原則任意(適用免除) | 上記に該当しない一般的な非上場の中小企業 |
上場企業と大会社が対象
新リース会計基準の適用が義務付けられるのは、主に金融商品取引法に基づく上場企業や、会社法における大会社です。大会社とは、資本金が5億円以上、または負債総額が200億円以上の株式会社を指します。
これに加えて、会計監査人を任意で設置している企業や、上場企業および大会社の子会社も強制適用の対象に含まれます。親会社が上場している場合、連結決算のために子会社も親会社と同じ基準で会計処理を揃える必要があるためです。
例えば、非上場の中規模企業であっても、親会社が上場企業であれば新基準への対応を求められます。つまり、自社の規模だけを見て判断するのではなく、グループ全体の資本関係や監査の有無を確認することが不可欠です。
中小企業は原則任意適用
一方で、上場企業や大会社などに該当しない一般的な中小企業については、新リース会計基準の適用は義務付けられていません。これまで通り「中小企業の会計に関する指針」に準じた処理を継続することが認められています。
中小企業は限られた人員で経理業務を行っていることが多く、新基準による複雑な会計処理を強制すると実務負担が過大になるためです。そのため、基本的には新しい基準に対応するためのシステム投資や業務フローの変更を急ぐ必要はありません。
ただし、将来的に株式公開(IPO)を目指している場合や、取引先の金融機関から財務情報の透明性を強く求められている場合には、自主的に新基準を適用するケースも考えられます。この例から言えるのは、中小企業であっても自社の将来的な経営目標に合わせて、新基準の適用を検討する余地があるということです。
新リース会計基準が導入される背景

これまで日本で運用されてきたリース会計基準が、なぜここへ来て大きく見直されることになったのでしょうか。その背景と目的を以下の表にまとめました。
| 目的の観点 | 具体的な背景と理由 |
|---|---|
| 国際的な整合性 | IFRS第16号などの国際会計基準とルールを統一するため |
| 情報の透明性 | 投資家が企業の隠れた負債を正確に把握できるようにするため |
| 比較可能性 | 国内企業と海外企業の財務状況を同じ物差しで比較するため |
国際的な会計基準との統一
新リース会計基準が導入された最大の理由は、日本の会計基準を国際財務報告基準(IFRS)と統一させるためです。国際的な会計基準では、2016年に公表されたIFRS第16号によって、すでにリース取引の処理方法が大きく変更されていました。
IFRS第16号では、どのような形のリースであっても原則として資産と負債を計上することが求められています。これに対して日本の旧基準では、一定のリース取引について費用として処理するだけで済む例外が広く認められていました。
このルールの違いを放置すると、日本企業と海外企業が同じようなリース契約を結んでいても、貸借対照表の見た目が全く異なる状態になってしまいます。つまり、国際的なルールとのズレを解消し、資本市場での信頼性を確保することが新基準導入の直接的なきっかけです。
財務諸表の透明性向上
もう一つの重要な背景は、企業の財務状況を示す財務諸表の透明性を向上させることです。従来の基準では、高額な設備を長期間リースしていても、貸借対照表に記載されない「オフバランス」という状態が認められていました。
オフバランスの状態では、将来にわたって多額の支払い義務を抱えているにもかかわらず、その負債が表面上は見えにくくなります。投資家や金融機関にとっては、企業がどれだけのリスクを負っているのかを正確に評価できないという問題がありました。
新リース会計基準によって隠れた負債がすべて可視化されれば、利害関係者は企業の実態をより正確に把握できるようになります。この例から言えるのは、投資家保護の観点からも、すべてのリースを貸借対照表に載せることが時代の要請となっていたということです。
これまでのリース会計基準との違い
新リース会計基準とこれまでの旧基準では、会計処理の考え方が根本的に変わります。貸借対照表(B/S)と損益計算書(P/L)にどのような違いが生じるのかを、以下の表で比較します。
| 項目 | これまでの基準(旧基準) | 新リース会計基準 |
|---|---|---|
| リースの区分 | ファイナンスとオペレーティングに分類 | 原則として区別を廃止し単一のモデルに統合 |
| 貸借対照表(B/S) | オペレーティングリースは計上不要(オフバランス) | すべてのリースを資産と負債として計上(オンバランス) |
| 損益計算書(P/L) | 支払ったリース料をそのまま費用として計上 | 減価償却費と支払利息に分けて費用を計上 |
オペレーティングリースを計上
これまでの基準との最も大きな違いは、オペレーティングリースの扱いが変わることです。従来のルールでは、リース取引はファイナンスリースとオペレーティングリースの2種類に分けられ、後者は賃貸借処理として扱われていました。
そのため、オフィスビルの賃料や社用車のリース料などは、毎月の支払い額を費用として計上するだけで済み、貸借対照表には載せない「オフバランス処理」が広く行われていました。しかし、新リース会計基準ではこの区分が原則として廃止されます。
すべてのリース取引が資産および負債として貸借対照表に計上される「オンバランス処理」へと統一されることになります。つまり、これまで費用として処理していたオフィスの家賃や複合機のリース契約なども、原則としてすべて資産と負債の管理対象になるということです。
使用権資産とリース負債を追加
オンバランス処理への変更に伴い、貸借対照表に計上する勘定科目も新しくなります。新リース会計基準では、借り手側の企業はリース開始時に「使用権資産」と「リース負債」という2つの項目を計上します。
使用権資産とは、契約期間にわたってそのリース物件を使用する権利を資産として評価したものです。一方のリース負債は、将来にわたって支払う義務のあるリース料の総額を、現在の価値に割り引いて計算した負債の金額を指します。
例えば、長期間にわたるオフィス移転の賃貸借契約を結んだ場合、その契約期間中に支払う家賃の総額に相当する額が、大きな資産と負債として貸借対照表に突如として現れることになります。この例から言えるのは、企業の総資産と負債の金額が、見かけ上大きく膨らむということです。
損益計算書の費用項目が変化
貸借対照表だけでなく、損益計算書(P/L)における費用の計上方法も変化します。従来のオペレーティングリースでは、毎月支払うリース料を「支払リース料」や「地代家賃」として、営業利益の計算に含まれる販売費および一般管理費に計上していました。
しかし新リース会計基準では、計上した使用権資産を少しずつ費用化する「減価償却費」と、リース負債に対する「支払利息」の2つに分けて計上することになります。減価償却費は営業利益の計算に含まれますが、支払利息は営業外費用として扱われます。
この変更により、従来の支払リース料が営業外費用である支払利息に振り替わる分だけ、表面上の営業利益は押し上げられる効果があります。つまり、支払う金額自体は変わらなくても、利益の構造や見え方が従来とは異なる結果になるということです。
新リース会計基準が実務に与える影響
新リース会計基準の導入は、経理部門の作業が増えるだけでなく、企業の財務状況やシステム環境にまで幅広い影響を及ぼします。具体的な影響範囲を以下の表で整理しました。
| 影響の領域 | 発生する具体的な影響・課題 |
|---|---|
| 財務指標 | 総資産と負債が増加し、自己資本比率や総資産利益率が低下する |
| 業務フロー | 契約内容の精査や契約変更時の再計算など、経理と事業部の連携が必要になる |
| システム | 新しい会計処理に対応したリース管理システムへの移行や改修が求められる |
自己資本比率などの指標悪化
新基準によってすべてのリース取引が貸借対照表に計上されると、企業の主要な財務指標が悪化する可能性があります。特に影響を受けやすいのが、企業の安全性を表す自己資本比率です。自己資本比率は、総資産に対する自己資本の割合を示します。新基準の適用によって使用権資産とリース負債が両建てで増加すると、自己資本の金額が変わらなくても総資産の金額だけが大きくなるため、結果として自己資本比率は低下してしまいます。
例えば、不動産の賃貸借契約を多く抱えている小売業や飲食業では、負債が大きく膨らむことで金融機関からの融資審査に影響が出る懸念もあります。この例から言えるのは、あらかじめ財務指標の悪化をシミュレーションし、ステークホルダーへ十分に説明する準備が必要だということです。
契約管理と経理業務の増加
経理部門における日常的な業務負担は、これまでと比較にならないほど増加することが予想されます。従来のオフバランス処理であれば、毎月の請求書に基づいて費用を計上するだけで済んでいましたが、新基準ではそうはいきません。
新基準では、契約ごとにリース期間を確定させ、適切な割引率を用いて現在の価値を計算する高度な実務が求められます。さらに、契約の途中でリース期間が延長されたり、賃料が改定されたりした場合には、その都度リース負債の金額を再計算し直さなければなりません。
また、経理部門だけでは全国の拠点でどのような賃貸借契約が結ばれているかを把握しきれないため、現場の事業部門から正確に情報を集める業務フローの構築も必要です。つまり、単なる会計処理の変更にとどまらず、社内全体の契約管理体制そのものを見直す必要があるということです。
システムの改修や導入の必要性
業務の複雑化に伴い、既存の会計システムや管理ツールのままでは対応しきれなくなる企業が多くなります。これまでリース契約を少人数で表計算ソフトを使って管理していた場合、新基準の複雑な減価償却計算や利息計算を手作業で行うのは非現実的です。
手作業による計算ミスを防ぎ、監査法人のチェックに耐えうる正確なデータを算出するためには、新リース会計基準に対応した専用のシステムを導入するか、既存のシステムを大幅に改修する必要があります。
システムの選定や要件定義、テスト運用には多くの時間を要するため、適用開始の直前になってから動き出すのでは間に合いません。この例から言えるのは、システム投資のための予算確保と、早急なベンダー選定が実務上の重要な鍵を握るということです。
適用に向けて進めるべき準備手順

2027年4月からの強制適用に向けて、企業はどのようなステップで準備を進めればよいのでしょうか。確実に対応を完了させるための手順を、以下の表にまとめました。
| 準備ステップ | 実施すべき具体的な内容 |
|---|---|
| 1.契約の把握 | 社内のすべてのリース契約や賃貸借契約を洗い出し、リスト化する |
| 2.影響額の試算 | 新基準を適用した場合に、財務諸表や経営指標がどう変化するかを概算する |
| 3.体制の構築 | システムの選定と導入を行い、事業部から経理への情報連携ルールを定める |
リース契約の網羅的な把握
準備の第一歩は、現在自社が結んでいるすべてのリース契約や賃貸借契約を漏れなく洗い出すことです。これまでは費用として処理していたため、経理部門が詳細な契約内容を把握していないケースも珍しくありません。
まずは総務部門や各事業部門と連携し、オフィスビル、倉庫、社用車、コピー機、パソコン、さらには業務委託契約の中に隠れている実質的なリース取引も含めて、契約の棚卸しを実施します。
集めた契約書の中から、契約期間、解約の条件、毎月の支払い額などの詳細なデータを抽出し、一元管理できるリストを作成します。つまり、どれだけの契約が新基準の対象になるのか、自社の現状を正確に把握することがすべての出発点となります。
財務諸表への影響額を試算
契約のリスト化が完了したら、次に新基準を適用した場合の財務的なインパクトを試算します。洗い出した契約データをもとに、仮に今すぐ新リース会計基準を適用したと仮定して、貸借対照表の資産と負債がどれくらい増えるのかを計算します。
この試算を行うことで、自己資本比率や利益率といった経営指標にどの程度の影響が出るのかをあらかじめ知ることができます。もし影響が著しく大きい場合は、既存の契約を見直したり、不要な資産を返却したりといった対策を打つ時間を確保できます。
例えば、計算が複雑な場合は、外部の専門家である監査法人やコンサルティング会社のアドバイスを受けながら試算を進めることも有効です。この例から言えるのは、早期に影響額を見積もることで、経営陣への報告や対策の立案がスムーズに行えるということです。
業務フローとシステムの構築
影響額の把握と並行して、新しい業務フローとITシステムの構築を進めます。試算で判明した要件をもとに、自社の規模と複雑さに対応できるリース管理システムの選定を行います。
システムを導入するだけでは不十分であり、現場で新しい契約が発生した際や、契約期間が延長された際に、どのようにして経理部門へ迅速に情報が伝達されるのかという業務ルールの策定が欠かせません。各部門の担当者向けにマニュアルを作成し、説明会を実施して理解を促す必要があります
本格的な適用が始まる前には、テスト運用として本番さながらの模擬決算を行い、計算結果に誤りがないかを確認します。つまり、システムと人の動きを組み合わせた確固たる運用体制を、適用開始日の前日までに完成させておくことが目標となります。
まとめ
最後に、本記事の要点をまとめると、以下の通りです。
- 2027年4月以後開始の会計年度から、上場企業や大会社を対象に強制適用が開始される
- オペレーティングリースを含むすべての取引を資産・負債として計上する「オンバランス処理」へ移行する
- 資産と負債の両建てにより、自己資本比率やROA(総資産利益率)などの財務指標が変動する
- 費用計上が「減価償却費」と「支払利息」に分かれるため、営業利益の見え方が変化する
- 膨大な契約の棚卸しと、新基準の複雑な計算に対応したシステム改修・導入が急務となる
新リース会計基準への対応は時間と労力を要しますが、早期に計画を立てて準備を進めることで、円滑な移行と財務情報の透明性向上を実現できます。
新リース会計基準の改正対応では、リース識別業務の効率化が求められています。
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